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  • 03/29/07:22

04.27.21:25

グラン・トリノ ~映画~

mirion.jpgクリント・イーストウッド監督作品は、暗すぎていやだった。
ラストが救いようがなくて、いつもいつも女性がどこか悪いイメージで、良い映画だとは思っても、好きにはなれなかった。
『ミリオンダラー・ベイビー』を観るまでは。


『グラン・トリノ』
ネタバレします。

偏屈なウォルト。
彼は朝鮮戦争帰り、その後結婚、アメ車工場で定年まで働き、子どもらは独立、妻に先立たれてからは芝生を刈って、自慢のフォード・グラン・トリノを磨いて眺めながらビールを飲んで過ごす。
それが至福のとき。
差別主義者の彼だが、グラン・トリノを盗みに入ってきた隣家のアジア系移民の少年や、少女、その家族との交流がはじまる。

grantorino1.jpg隣家のタオ少年は、気が弱いけれど頭が良く、「男とは、女とは、こうあるべき」という世の中の考え方にはまだ染まっていない。
戦争で無意味で残酷な殺人を犯したことが大きな心の傷になっているウォルトは、彼に無限の明るい未来を見たのではないだろうか。
タオ少年や、聡明で明るい姉のスーと触れ合ううちに、ウォルトの心の壁はさらさらと取り払われていくが、しつこく絡んでくる彼らの従兄弟たちの存在が暗い影をおとす。

その従兄弟たちのひとりをブチのめした報復で、スーを輪姦されたウォルトは、ある選択をする。


イーストウッドによるイーストウッドのイーストウッドのための映画。
と言えばあんまりだろうか。
とにかくイーストウッドの男っぷりが良すぎる。
ぶつぶつ文句は言うが、正直なだけで心根は優しく、そして慎み深く、心に傷を負いながらも平和に生きている。
年老いて、妻はいないし、どうやら命に関わる病があるらしい。
命の期限をたぶん彼は知り、そして自分が最後にやるべきことを考えた。

それは、隣人の少年・少女を守ること。
自分の中で、戦争で殺してしまった人々への贖罪を行うこと。
そして気持ちのどこかには、生き方がすれ違ってしまった息子への抗議や、そう育ててしまったことへの自身のケジメもあったのではないだろうか。
丸腰でギャングたちの前に立ち、銃弾に蜂の巣にされた彼は、まるで大きな十字架のように倒れていく。

このラストだが、大きいというか格好良いというか、正義や赦しとは・・・などと考えさせられる。
タオ少年に託されたグラン・トリノが、アメリカという国の新しい可能性、を感じさせる。
大きな愛をもらった気になる。


だが、それは彼の死をもってしか表すことはできなかったのだろうか。
彼の持っていた大きな愛。
大きな心。
それらを、生きて伝えていくことはできなかったのだろうか。
あれは立派な自殺ではないか。
老醜をさらしてもいい、それでも生きていてくれさえすればいい。
私にはそれがどうしても解せない。
生きていてほしい。
あれはだめだ、自殺はだめだ。


grantorino.jpgだからこそ、この作品は彼自身によるクリント・イーストウッドの「有終の美」を飾る作品だ、という、概ね誰もが語っている結論に落ち着きたい。
ちゃんと動けるうちに自分の男らしさの美学を完結させたかった、そういうことか、と。


どうしても素直に感動に浸ることができなかったのは、「ミリオンダラー・ベイビー」の時と同じく、イーストウッドの年老いた顔かたち、姿かたちが父によく似ていたから。
スーと話をする姿や、スーが輪姦されて帰ってきた姿を見た彼の表情などは、父を見るようでいたたまれなかった。
父が傷ついたようで、それがとても悲しかった。
だめだ、お願いだから生きていて、生きてるだけでいいから、と、願いながら観ていた。
あんな死に方してほしくない。
置いていった十字架が重い。
大きすぎる。

結局、やはり彼は孤独だったのだ。
彼の自死に心から傷つく人が、もうこの世にいなかったのだ。
だから彼にはあの選択ができたのだ。

素晴らしい作品だと思ったが、私には重かった。
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Re:グラン・トリノ ~映画~
2009年04月27日月

ラストを除けば、ダーティハリーがそのまま年を取ったようで、僕は微笑ましかったです。
主演作の最後にこういう作品を持ってくるのがうれしいですね。
イーストウッドはそのキャリアの最初から脇役のイメージがないんですよ。
主演を辞めたら、今度はカメラの後ろで監督に専念してくれるでしょう。次回作もキャスティングが決まりつつあるそうです。

Re:Re:グラン・トリノ ~映画~
生涯主役ね!なるほど。

いやいや、微笑ましかったし悪いとも思わず、私も心を鷲掴みされたんですが、スカッと正気に返ったところが何か解せないのです。
なんでかな。
2009/04/27 23:29

Re:グラン・トリノ ~映画~
2009年04月27日月

ファザコンが父を重ねたら正確な批評は出来ないよ。まぁ、感想だからそれはそれでいいけど。ガンコオヤジは日本の縁側にも良くいるから取り立ててみんなが賛辞を送るほどできてるとは思わない。でも、チェンジリングよりは好き。グラントリノなんてダサイ車にこだわってるのもちょっと作為的でなんですね。

  • どっかから来ました
  • 編集
Re:Re:グラン・トリノ ~映画~
おお!
私のいけない部分を真っ向から斬ってくれてありがとうございます!
コメントありがとうございます。
私のは完璧個人的な感想です。
作品の批評など、おこがましくてできません。

で、私のファザコンぶりを除いてこの作品を観たときに、最後のイーストウッドの選択をどう考えるだろう?と思ったら、ちょっと怖いのです。
西部劇も知らないし、ダーティハリーは観たけど覚えてないし、以前の作品などを加味して考えられないので、もしかすると最後の彼を「男だ!イーストウッド!」などと感激しそうで・・・

なんとなく、手放しに感激してはいけない気がするんですよねぇ。
何でそう思うのか、そこのとこがまだボンヤリしてます。
2009/04/27 23:24

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