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  • 11/25/10:55

12.17.16:44

スルース~映画~

目を見張る洒落た内装と家具、壁一面に貼られた自身の肖像写真、それらは専制的で、訪問者に服従を強いるかのよう。
妻を失った老醜の作家が、若く美しい妻の恋人を招きいれたのは、彼自身ともいえる虚飾と傲慢極まりない人工の美にあふれた館の中。
その中で繰り広げられるのは、男性の中の(というよりもあえて私は人間の、と言いたいが)多面性、二面性を暗号のようなセリフと演出でみせる密室劇。

老いた作家のマイケル・ケインと、美しい悪魔のようなジュード・ロウ、ふたりによる深くて痛い摩訶不思議な物語。


憎しみと愛、一見それらは相反する感情に思えるが、実はとても似ている。
それを認めるか認めないか、気付くか気付かないかで、私たちの人生は随分と違ってくると思う。
ただしそれが幸せなことなのか、私にはわからない。
なぜならそこに気付いた瞬間から、未来のない、まるで無間地獄のような苦しみを抱えることにもなると思う。
様々な感情を理解する、心の痛みを理解できる、という意味では確かにより深く人生を生きられるのだろうけど。


老作家は若く美しい妻を、若く美しい男に奪われる。
最初は憎しみと嫉妬で彼を見ていたに違いない作家だが、知的で傲慢であるからこそ、その気持ちは次第に

「彼がほしい」
「彼になりたい」

という気持ちに変わっていったのではないか。
作家が若い男に見せびらかす虚飾の城は、美しくて豪華であればあるほど空しい。
スタイリッシュな城の中に住まうのは、どんなに虚飾を尽くしても諍うことのない老いにまみれた作家だから。

奪え・・・とそそのかした宝石も、作家の首にまかれた途端、輝きを失ったかのように見える。

檻のような狭いエレベーターに横たわるジュードは、作家が得たひとつの美しいオブジェだが、そこに永遠はない。
しかし、自分の分身のような、過去の自分のような若さと美しさを壊したことで、作家の中だけに彼を閉じ込めたのではないだろうか。
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