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  • 04/20/03:24

03.26.00:12

ひとつずつの そしてひとつの

geltukou.jpg






時はすべてを連れていくものらしい
なのにどうして寂しさを置き忘れていくの
いくつになれば人懐かしさを
うまく捨てられるようになるの

難しいこと望んじゃいない
有り得ないこと望んじゃいない

時よ最後に残してくれるなら
寂しさのぶんだけ愚かさをください

おまえとわたしはたとえば二隻の舟
暗い海を渡っていくひとつひとつの舟
互いの姿は波に隔てられていても
同じ歌を歌いながらいく二隻の舟

時流を泳ぐ海鳥たちは
むごい摂理をささやくばかり
いつかちぎれる絆みたさに
高く高く高く

敢えなく私が波に砕ける日には
どこかでおまえの舟がかすかにきしむだろう
それだけのことで私は海をゆけるよ
たとえ舫い綱は切れて嵐にのまれても
きこえてくるよどんな時も

おまえの悲鳴が胸にきこえてくるよ
越えてゆけと叫ぶ声がゆくてを照らす

難しいこと望んじゃいない
有り得ないこと望んじゃいないのに

風は強く波は高く闇は深く星もみえない
風は強く波は高く暗い海は果てるともなく
風の中で波の中でたかが愛は木の葉のように

わたしたちは二隻の舟ひとつずつのそしてひとつの
わたしたちは二隻の舟ひとつずつのそしてひとつの
わたしたちは二隻の舟

中島みゆき「二隻の舟」
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